2024年3月16日、イオンシネマが公式X(旧Twitter)に、車いすで映画館を利用していた客に対して従業員が不適切な対応をしたと謝罪文を掲載しました☟
【弊社従業員による不適切な対応に関するお詫び】 pic.twitter.com/8e8tc5DY9M
— イオンシネマ【公式】 (@AEON_CINEMA) March 16, 2024
日本では過去にも、車いすで公共交通機関や施設を利用していた障がい者に対するスタッフや職員の対応が批判されると同時に、障がい者の応対も批判炎上してしまうという事態が繰り返されています。
なぜこのような事態が繰り返されてしまうのでしょうか。
記事の前半では、車いすの障がい者への対応が炎上してしまった3つのケースを紹介します。
そして記事の後半では、日本でこのような事態が繰り返されている根本原因は誰なのか、はっきり断言!
改善策を私自身が提案します。
2024年4月1日から、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されます。
義務化で何が変わるのか、一般の人たちはどうすべきなのか解説します。
車椅子の障がい者に対する対応が炎上してしまった3つの事件とは
バニラエアの搭乗拒否問題
Kさんは同行者に手伝ってもらうことを伝えていたが、実際にタラップを上ろうとした直前に空港職員が制止。
Kさんは自身の腕の力により、自力でタラップを上った。
※バニラエアは、ピーチとの統合に伴い、2019年10月26日で全路線運航を終了
奄美空港にはボーディングブリッジが無く、搭乗するにはタラップを上り下りするしかないのですが、奄美空港の職員から同行者に車椅子を持ち上げなら搭乗するのは危険だということで、搭乗拒否された問題。
バニラ・エアの対応が批判されただけでなく、車椅子で利用することを事前連絡していなかったKさん自身も批判を浴びました。
JRの案内拒否問題
約1時間交渉したが事態は変わらず、Iさんはそのまま電車で向かった所、途中の熱海駅で駅員が待機していて、その後の無人駅でも車いすを運んでもらった。
旅行の帰りにも同様の手伝いを駅員から受けた。
最近は駅のバリアフリー化が進んで、エレベーターやスロープなどが順次整備されていますが、無人駅などでは整備が追い付いていません。その無人駅を障がい者が利用しようとした場合のケースです。
この場合も先ほどのバニラエア同様、車椅子のIさんは事前連絡はせずに、旅行当時になって駅で駅員に相談しています。
そしてIさんがブログでこの内容を公開したところ、駅員に対する感謝の言葉がないなどと批判、炎上される事態になりました。
イオンシネマの不適切対応
上映後支配人みたいな人(Nさんによる)から、「この劇場はご覧の通り段差があって危なくて、お手伝いできるスタッフもそこまで時間があるわけではないので、今後はこの劇場以外で見てもらえるとお互いいい気分でいられると思うのですがいいでしょうか。」と言われた。Nさんはイオンシネマの社長と話し合いたいとSNSに綴っている。
Nさんは過去にも同じイオンシネマにて鑑賞していたのですが、今回このような思いがけない言葉をはじめて言われてしまい、とても悲しかったとSNSで報告しています。
この内容についてネットでは、イオンシネマの謝罪内容が不備だとする指摘がある一方、車椅子用のスクリーンを勧めるべきなどとスタッフ側の落ち度は無いとする意見も多いようです。
車椅子障がい者への批判は3年毎に発生?
車椅子利用者への批判炎上の共通点
・車椅子の障がい者が、ブログやSNSで一部始終を投稿
今回3つの炎上案件をご紹介しましたが、偶然にも約3年毎のサイクルでこのような車椅子障がい者に対するトラブルが発生していました。
つまり2017年から2024年まで、車椅子利用者に対する日本の政策や一般人の意識はあまり変わっていないということになります。
これだけ施設のバリアフリー化が進められてきたにも関わらずです。
特に最後のケースのイオンシネマに関しては私も何回も利用してきたことがあるから分かるのですが、商業施設にある映画館だけあってバリアフリー化は相当整備されています。
エレベーターはもちろん、各スクリーンに入る時もスロープがありますからね。
ただしプレミアムシートがどうかなのかは分かりませんし、イオンシネマの件は劇場の不備というよりはスタッフが人手を取られて重荷になっていることをやんわり伝えた所、車椅子障がい者は拒絶されたと認識しているのです。
日本で繰り返される車椅子障がい者に対する炎上はなぜ起こってしまうのでしょうか。
アメリカのケースと比較してみます。
日本の障がい者に対する法律整備が甘すぎることが根本原因ではないのか
日本にもアメリカにも障がい者に対する法律は存在します。
日本では、障害者差別解消法や障害者総合支援法、障害者虐待防止法などがあります。
アメリカでは1990年にADAという法律が制定され、社会問題になっていた人種差別を禁止すると同時に、障害をもつ人も米国社会に完全に不自由なく参加できることを保証しています。
では日本とアメリカの法律の違いは何か。
アメリカのADAでは、民間企業の運営する交通機関や建物の場合、初回の違反に対しては5万ドル以下、2回目以降の違反に対しては10万ドル以下の罰金が科せられます。
昨今の円高で日本円に換算してみると、初回だと750万円以下の罰金、2回目以降だと1500万円以下の罰金になります。
これは大手の企業にとってもかなりの痛手でしょう。
しかもそれだけの罰金になる法律違反行為をしたとなると、従業員のみならず会社自体のイメージも大きく損なうことは必至です。
その反面、日本では明確な罰金や罰則はありません。
ようやく2024年4月から、障害者差別解消法の改正により、事業者による障害のある人への合理的配慮の提供が義務化されました。
しかも義務化されるとアピールしつつ、明確な罰則や罰金は明記されていないという、いかにも日本らしい企業や団体に配慮した法律となっています。
日本で車いす利用者を含めて障がい者に対する政策や意識がアメリカよりも大きく低いのも、この法律の整備が追い付いていないことにあると、私は思いますよ。
障がい者を守る法律にも関わらず、企業や団体にも配慮しているという、玉虫色のどっちつかずの法律だからです。
最初にご紹介した3つの炎上案件ですが、公共施設の整備やスタッフ教育の責任は会社や団体、自治体や国にあります。
決して個人ではありません。
しかし日本で良くあるパターンとして、個人のルールやマナーに依存して自己責任論になるケース。
確かに今回批判の対象になってしまった3人の障がい者ですが、自己主張が強い人も居れば強く言えない人が居るのはどこの国でも同じこと。
それを自己責任に回帰してしまって一番得をするのは何もしない政治家なのです。
今まで罰則が無い中途半端な法律しか作れなかった議員や政治家が責められるべきであって、個人ではないのです。
まとめ
・アメリカと日本では、障がい者に対する法律の中身が大きく異なる
・明確な罰則規定が無い法律では社会は変えられない
アメリカでは障がい者のことを「チャレンジド」と呼ぶそうです。
以前NHKのドラマか何かであったと思うのですが、神からチャレンジという使命を与えられた人という意味があるようです。
私はこの言葉を聞いて、すごく前向きな気持ちになりましたよ。
日本では障がい者は周りの人に迷惑をかけてはいけないという、これも日本お得意の暗黙のルールみたいなものがあるようですが、アメリカでは企業や団体の責任としてしっかり法律に明記されているのです。
ヨーロッパにおいても、例えばフランスなどでは障がいのある人に対して差別をした場合に懲役刑や罰金が科されることがあるとのこと。
日本で個人個人がお互いを責めるのはもう辞めましょう。
それでは社会は何も変わりません。同じことを繰り返すだけです。
そうでなくて、企業や団体にもっと整備をしてもらう必要があるのです。
だからこそ政治家や議員の法整備が必要なのですが。
バニラエア炎上問題後、空港はしっかり対策改善していた
一番最初にご紹介したバニラエアの奄美空港での搭乗拒否問題。
現在では各空港に車椅子のまま搭乗できる特殊車両が配置されているようです☟
2017年のバニラエア車椅子搭乗拒否事件から各空港には写真のような車椅子に乗ったまま搭乗口に上げる車両が導入されてきた。
左舷は通常のタラップ、この車両は右舷につけて安全に迅速に乗降り出来る。
黙れ、わがまま言うな。では社会の進歩は止まる。 https://t.co/RlRvm0CE9l pic.twitter.com/Osgc9gfUOV— ゴクラクトンボ 🧷🌈 (@takayukiigokura) March 16, 2024
これがあれば、もしけが人や病人が出た場合でも有効利用できますよね!
本当に良い改善だと思います。
このような前向きな施策が全国に広がってほしいと願っています。
もちろんそれを整備する責任があるのは国や自治体、企業や団体ですよ。