最近は企業の不祥事だけでなく、個人的な問題行為でも謝罪会見するのを見かけるようになりました。
昔はテレビでしか見る事が出来なかった謝罪会見や記者会見が、今はネットの普及により誰でもどこでも見る事ができるるようになり、それと同時に今までの会見では通用しなくなり、逆に火に油を注ぐような更に炎上してしまう事態になることも多発しています。
なぜ謝罪会見は炎上してしまうのか?その震源はどこにあってどうすれば炎上を抑えられるのでしょうか?
今回は2019年の「謝罪」から、昔と今との違いなどをご紹介します。
私は関係ないよ?と思っているあなた!今はSNSで誰でも情報を発信できる時代であり、気を付けないといつか「炎上」騒ぎに巻き込まれてしまうかもしれませんよ。
参考にした書籍は、日経ビジネス2019.12.16号です。
ポイントは4つです。
②PayPayはSNSだけで謝罪してカネの力で乗り切った!謝罪会見をどのように行うかで今後の運命を左右する!
③2019年多発した「バイトテロ」問題。どの企業も他人事ではない!
④会見の生配信が人気急上昇中!会見中にSNSで反論される事も考えて一人一人が行動しなければならない時代に
謝罪会見はなぜ炎上するのか?平成までの謝り方は通用しない!
2019年の「謝罪カレンダー」
1月:ZOZO、業績下方修正 | 販売拡大戦略が不振で、業績を下方修正。当時の前澤友作社長がツイッターで謝罪 |
2月:レオパレス、施工不良 | 施行不良物件が新たに発覚し、当時の深山英世社長が謝罪。その後6月に辞任 |
3月:ピエール瀧、薬物問題 | タレントのピエール瀧氏がコカイン使用で3月に逮捕。4月の保釈時に頭を下げる |
4月:「忖度発言」で辞任 | 塚田一郎議員が道路整備を巡り、「私が忖度した」と発言。責任を取って国土交通副大臣を辞任 |
5月:野村証券、情報漏洩 | 東京証券取引所の上場基準の見直しなど非公開情報を顧客に漏洩。金融庁が業務改善命令 |
6月:信用スコアで炎上 | ヤフーの信用スコア事業で個人情報が同意なく外部に提供されかねないとの批判が高まりお詫び |
7月:吉本「闇営業」問題 | 反社会的勢力の会合に参加し、ギャラを受け取った問題。タレントと吉本興行社長が謝罪会見 |
7月:セブンペイ問題 | スマホ決済サービス「セブンペイ」で大規模な不正利用が発覚。その後の謝罪会見で2段階認証セキュリティを認識していなかった事が判明。開始からわずか3か月でサービス廃止となった |
8月:リクナビ問題 | 学生の内定辞退率予測データを本人の承認なしに販売。リクルートキャリアの小林大三社長が会見 |
9月:香港、条例改正を撤回 | 香港で逃亡犯条例の改正案に市民が反発。大規模デモ多発で行政長官が撤回表明 |
10月:巨額申告漏れ | チュートリアルの徳井義美氏に1億円超の申告漏れが発覚。過去の無申告も明らかになり活動自粛 |
11月:笠りつこ問題発言 | 女子プロゴルファーの笠りつ子氏がゴルフコース関係者に不適切発言。11月19日に涙の謝罪 |
12月:神奈川データ流出 | 神奈川県の行政文書を保存したハードディスクが、廃棄業者から流出。黒岩知事が謝罪 |
2019年に沢山の「謝罪」が行われましたが、ここで注目したいのは7月の「セブンペイ」問題です。
実はこの謝罪会見は、不正利用の問題が発覚した2日後に行われており、会社としては素早く対応したのですが騒ぎが逆に拡大してしまった例です。
その原因は「事前にセキュリティー審査を繰り返し、脆弱性は指摘されなかった」と会見で説明していたが、この時点で「7iD」に2段階認証やパスワード変更の通知機能が導入されていないことなど、認証システムに問題があると指摘されていて、記者会見での記者からの2段階認証に関する質問に対して社長が答えられなかったのです。
この発言がインターネット上で拡散されて、セブンペイは自らの失策によって立ち直る機会を失ったのです。
この会見の7時間前には、ネット上でこの問題が話題になっていたそうで、そういうチェックも不十分だったことも原因の一つでしょう。
謝罪会見は何が何でも早く行えばいいというものではなくて、問題に対する事実確認と原因をしっかり把握しておく事が何よりも大切なのです。
あるセブンペイ関係者が「謝罪会見の開き損だった」とぼやいていたらしいのですが、実は謝罪会見無しで乗り切った会社もあるんですよ。
PayPayはSNSで謝罪。第2の100億円キャンペーンで乗り切る
PayPayはソフトバンクグループが総力をあげて2018年10月に開始したスマホ決済サービスです。
同年12月には100億円還元キャンペーンを行うなど、後発のキャッシュレス決済サービス事業者として猛追劇していたのですが、それと同じ時期にクレジットカードの不正利用被害が多発。
ここまでは「セブンペイ問題」と同じような流れですが、ここからが違うんですよ。
結果的にPayPayは謝罪会見を開くことはなく、川邉健太郎社長がツイッターを使っておわびと対策を発信しています。
SNSとウェブサイトを使っておわびと対策を次々と打ち出す事で、事態の打開を図ったのです。
その後PayPayは2019年2月より第2段となる100億円キャンペーンを展開して、いったんは傷ついたブランドイメージを、まさしく力技で変えたのです。
この「セブンペイ」と「PayPay」の明暗を分けたのはSNSに対する対応であり、今までのメディアを前に経営陣が頭を下げればいいというものではないという象徴的な事例です。
ただ、これはある種の賭けでもあるんですよ。
SNSだけで謝罪すれば全て大丈夫かといえばそんな事もなくて、8月に発覚した「リクナビ問題」では、謝罪会見を開くほどの案件ではないという判断が、対応の遅れに繋がってしまいました。
謝罪会見だけでもダメ、かと言ってSNSも万全ではない・・・すごく難しい時代なのです。
バイトテロはSNSから一気に拡散する、インフルエンサーとマスメディアの影響力大
2019年にネット炎上が続出した「バイトテロ」。
くら寿司や焼肉でんなど、飲食店でバイト従業員が不衛生な行為をSNSにアップし、それが一気に拡散して炎上騒ぎになりました。
まず問題ある発言や行動が見つかると、それを発見した人物がSNSなどで情報を発信します。
それらの意見を集約したまとめサイトや、ネットメディアが動き出すと同時に「インフルエンサー」と呼ばれる、多くの人々にそのSNSアカウントが知られている有名人も、話題にします。
そしてネット上のトレンドワードや話題を取材し、記事化・映像化したマスメディアによって、更に炎は大きくなります。
このネット炎上は何も飲食店だけの問題ではなく、例えば科学メーカーのカネカに対し「夫が育休明けに転勤を命じられ、拒否したら退職に追い込まれた」など、ツイッターで告発するような事案もあります。
最近はSNSを用いた内部告発も増えてきており、どこから炎上するか分かりずらくなっています。
しかも会見中にSNSで反論されるという、今までにない事態も発生しています。
NGT48問題で、会見中にSNSで反論をくらう運営会社の幹部
新潟を拠点に活動するアイドルグループ「NGT48」に在籍したメンバーが、ファンの男性2人に暴行された問題で、運営会社AKSが3月に謝罪会見を開きました。
運営会社の幹部らが説明していましたが、被害者のタレント自身が会見のネット中継を見ながら
「何で嘘ばかりつくんでしょうか」
などと反論ツイートを次々とアップ。
記者からの追求で、壇上の代表らがスマホで当該ツイートを確認し、動揺する映像がリアルアイムに流れてしまった会見でした。
すべてが可視化され、アーカイブスとしてネットに残る時代。
謝罪会見を開く場合、こうした生配信を前提とした準備が大切になります。
関係者と事実関係を事前にしっかり確認しておかないと、会見自体の信用性が損なわれてしまいます。
これまでは記者会見の登壇者が一方的に自身の見解を「事実」として語っていた記者会見ですが、SNSで反論されるケースも想定した情報の整理と登壇者へのインプットは欠かせなくなっています。
まとめ
謝罪会見の生配信は今後さらに拡大することは間違いないでしょう。
この生配信を積極的に活用しているのが、ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長です。
孫氏は2005年11月の決算会見から生配信をしているそうです。
2019年11月に最終赤字に転落した決算会見では、「大嵐」「真っ赤っかの大赤字」「ボロボロ」と孫社長が自身の経営判断のミスを認める姿が流れました。
孫社長の個人的な人気で批判を抑え込んでいる面もあるでしょうが、経営者が素直に語る姿を見せ続けていることが評価されている理由の一つでしょう。
2020年はどのような謝罪会見が行われるのか、注目していきたいと思います。
どうもありがとうございました。