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成人した子供が親のカネを盗んだ場合→子供は刑を受けません!【刑法244条1項、親族相盗例】

刑法

子どもがだましたり嘘をついたり、挙句の果てには親のカネを盗んだりした場合、警察は子どもを逮捕できるのでしょうか?

結論からいうと、刑法244条1項の「親族相盗例」により警察が動いてくれることはほぼありません。

例えその子供が20歳以上の成人であってもです。

中年の引きこもりが社会問題になっていますが、子供が親の年金を盗んだりクレジットカードを勝手に使用してもその子供が処罰を受ける事はないのです。

そんな刑法244条1項「親族相盗例」とはどういう法律なのか、では子供が親を殴った場合はどうなるのかなどをご紹介したいと思います。

ポイントは4つです。

①「親族相盗例」は、窃盗・詐欺・恐喝など一部の犯罪について適用される。器物損壊罪や強盗罪には適用されない
②なぜ子供を逮捕できないような刑法ができたのか
③もし子供が親のカネを頻繁に盗む場合、親はどうすればいいのか
④元農林水産省事務次官が子供を殺害した事件は、決して他人事ではない

親子間の犯罪に警察は消極的なスタンス

親族相盗例が適用される具体的な事例とは

家庭内暴力

親族間で発生した一部の犯罪行為またはその未遂罪については、その刑を免除するという、一見納得できない法律。

具体的には、窃盗罪・不動産侵奪罪・詐欺罪・電子計算機使用詐欺罪・背任罪・準詐欺罪・恐喝罪・横領罪・業務上横領罪・遺失物等横領罪とそれらの未遂罪に適用されます。

 

分かりやすくいうと、お金が絡むと「親族相盗例」になるのです。

子どもが「車貸せよ!!」と強い口調で言った場合や、嘘をついて親からお金をもらった場合などです。

ただし!子供が親を殴ってしまった場合は暴行罪、「殺すぞ!」と脅した場合は脅迫罪となりますから、子供でも立派な犯罪行為になり場合によっては逮捕されます。

親が所有しているパソコンやスマホなどを故意に壊してしまった場合なども、器物損壊罪に当たりますから罪になります。

お金が絡んでいるか絡んでいないか、これが子供が罪に問われるかどうかのポイントなのです。

ではなぜこのような「親族相盗例」という刑法ができたのか、簡単にご紹介していきます。


昔の儒教的な考えが今でも続いている現実

民法

儒教は「孔子」の打ち立てた思想がもとになっていますが、ここでいう儒教思想とは・・・

人間は子孫を通して永生を得ることができ、子孫は親を通して命を得ることができると考える。従って、子孫は家系を継承し父母の老後面倒を見てあげなければならず、祖先を祭る責任を果たさなければならない

このような儒教的な家族観の影響を受けて、「法律は家族間の問題には関与しない(家庭内で解決させる)」という明治時代の政策的配慮が現代でも働いていると考えられています。

これは日本だけの事ではなく、ヨーロッパにおいても「法は家庭に入らず」というローマ法以来の法諺が存在していました。


但し現代においては、この儒教的な考え方が通用しないケースも出てきました。

昭和の時代、家の中の物は家長の所有であり、もしその所有物を子どもが盗んだ場合は、「懲戒権」で対応すべき問題だと捉えられていました。

しかし今では、例えばスマホや車など個人で所有している物も多く、「懲戒権」においても一歩間違えばゆきすぎた親の体罰だと問題視されるようになってきています

民法822条の親権者権利「懲戒権」は何が問題なのか

2019年6月に、親による子どもへの体罰を禁止し児童相談所の体制を強化する指針を含めた改正児童虐待防止法と改正児童福祉法が参院本会議で可決成立されました。 一部を除いて2020年4月から施行されます。 最近になり、 「親権」 や 「懲戒権」 と言った言葉が頻繁にニュース番組などで取り上げられるようになってきました。 …


2005年に母親の死によって生命保険の受取人となった未成年者の預金を、家庭裁判所から後見人に任じられた実の祖母(直系血族)と伯父夫婦(同居の親族)が横領するという事件が発覚しました。

この場合、本来の「親族相盗例」に従えば、祖母と伯父夫婦は処罰される事はないのです。

しかしこの事件は最高裁まで争われた結果、親族相盗例には当たらないという判決が下されています

お金に係わる親族間の問題でも、これからは犯罪として裁かれるケースがあるという事ですね。

これは生命保険金という少し特殊な例かもしれませんが、子供が親のカネを頻繁に盗んで本当に悩んでいる・・・となった時に何か方法はあるのでしょうか。


例え子供から暴力を受けた時もいきなり事件化するのでなく、相談窓口を利用

電話相談

家庭内暴力は明らかな暴行罪ですし、「殺すぞ!」と子供から脅されたら脅迫罪となります。

ただしそれをいきなり警察に事件化してもらうように言っても、先ほどご紹介した「民事不介入」の原則がある警察はすぐ動くことは難しいでしょう。

 

①まずは証拠を集める。ボイスレコーダー・動画など沢山の証拠があればあるほど良い
②緊急でない限り、警察の住民相談窓口、市役所の市民相談や法務省の人権相談などを利用してみる。ポイントなのは外部機関に相談する程親が困っているという事実を積み重ねる事
③外部機関の相談実績を積み重ねた上で、子供からの問題行為を証拠と共に警察に報告する
①から③の事をやっておくと、警察としても「これはさすがに問題だな・・・」と捉えてくれる可能性が高くなります。
例え事件化してくれなくても、警察が子供を呼び出して何らかの注意をしてくれるかもしれませんからね。
それで子供の暴力や脅迫が続く場合、警察が本腰を入れて動いてくれるという流れですね。

元農林水産省事務次官が息子を殺して逮捕された事件は、決して他人事ではない

犯罪

2019年6月に、元農林水産省事務次官が自宅で息子を殺害した事件。

この両親は、長期間息子からの家庭内暴力に悩んでいたといいます

報道によると「発達障害」があったというこの息子ですが、両親は一時期知り合いの病院に息子を通院させていたとの事。

ただこの両親が、警察の相談窓口や行政機関に相談したという情報は、私が把握している限りないようです。

親が国家公務員という事から、子供の問題行為が世間に公になる事を避けたかったかもしれませんが、これも私の推測にすぎません。

もし早い段階で親がそういう相談窓口に行っていれば、もしかしたら今回の事件は違った結果になったかもしれないのです。

たらればで言っても意味がないかもしれませんが、今回の事件を受けて世の中の多くの親御さんが学ぶことはできると思います。

子どもの暴力は立派な犯罪なのです

少しでも皆さんの参考になればと思います。

どうもありがとうございました。

刑法
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