【2020年映画化決定!】「死の淵を見た男、吉田昌郎と福島第一原発の500日」書評・レビュー

2020年3月11日で、あの東日本大震災から9年が経とうとしています。

10mを超える津波が東日本沿岸に押し寄せて、甚大な被害が出ました。

それと同時に忘れてはならないのが、福島第一原発事故が発生した事です。

地震から約1時間後に遡上高14 – 15 mの津波に襲われた東京電力福島第一原子力発電所は、1 – 5号機で全交流電源を喪失した。原子炉を冷却できなくなり、1号炉・2号炉・3号炉で炉心溶融(メルトダウン)が発生。大量の放射性物質の漏洩を伴う重大な原子力事故に発展した(Wikipediaより)

そして2020年3月に、この福島第一原発事故を題材にした映画が公開されます

『Fukushima 50』は、主演・佐藤浩市さん、共演・渡辺謙さん、監督・若松節朗さんです。

監督の若松さんは、映画「沈まぬ太陽」の監督でもあり、その時の主演が渡辺謙さんですね。

映画『Fukushima 50』の原作者は、ジャーナリストでノンフィクション作品を数多く出している「門田隆将」さんです。

そんな原作本を以前購入していたので、今回ざっくり個人レビューしたいと思います。

ポイントは3つです。

①福島第一原発で何が起きていたのかを、その場に居るような感覚で知る事ができた
②当時の菅総理大臣がいきなり現場に来た時の様子も描かれており、当時の現場の人がどう思っていたのかが分かる
③吉田所長をはじめとする現場の勇気ある行動おかげで、最悪の事態は避けられたという感謝の思いが浮かぶ

なお私が読んだ本のタイトルは「死の淵を見た男 吉田昌郎と福島第一原発の500日」で、映画された本は文庫本なのですが、内容自体はほぼ同じとなっています。


福島第一原発で当時何が起きていたのか?映画を見に行く前に改めて読んでみた

当時原発内部での絶望感と緊張感がこちらにも伝わってくる!

原発事故

福島第一原発事故についてはテレビや新聞などでも数多く報じられていますが、では事故当時の流れは具体的にどのようなものだったのか・・・。

ベント最大線量格納容器などさまざまな単語は断片的に覚えているのですが、それがどう繋がって何が問題だったのかは私も良く分かっていませんでした。

この本は2011年3月11日に、マグニチュード9.0の巨大地震が発生してからの、福島第一原発内で起きたありのままの出来事が詳細に描かれています。

「スクラムするぞ!」

「海水!・・・海水が入っています!」

「申し訳ないけれども、若い人間を行かせられない。そのうえで自分は行けるという者は、まず手を挙げてくれ」

とんでもない事態が起きているという現場の緊張感と必死さが、本を読んでいてこちらにもどんどん伝わってくるんですよ。

それが時系列で描かれていますので、原発の状況がどんどん悪くなっていくのが分かります。

私が本の中で印象に残っているシーンが、3月14日に福島第一原発3号機で起きた水素爆発です。

この時には近くで作業していた作業員が巻き込まれて、当初行方不明者が40名だと報告があったようです。

吉田所長はその報告を聞いて(これで、俺はここから生きて出るわけにはいかない)と思ったそうです。

あの時、かなりの人間を現場に出していたそうですが、現場に行って作業してくれって言ったのは私(吉田所長)ですから、もう自分が生きている意味がねぇて、思ったとのこと。

 

こういう原発内部で次々と発生する異常事態が本に描かれており、改めて福島第一原発事故のすさまじさを知る事になるのです。


官邸のドタバタぶりが現場を更に混乱させる要因に

怒る

福島第一原発事故が発生した2011年3月11日の翌日早朝に、当時の菅直人首相がいきなり現場に行った事を覚えている方も多いと思います

現場が大混乱している最中に何を目的に行くのか、私はこの本を読むまで全く分かりませんでした。

実際この本を読んだあとも分からない事だらけなのですが、なんとなく当時の菅首相がこうしたかったんだろうなという予測はついたのです。

ここで本に描かれている、菅首相の発言集をまとめてみました。

「俺の質問だけに答えてくれ」
「なんで俺がここに来たと思ってるんだ!こんなことやってる時間なんかないんだ!」
「ベントをなんで早くやらないんだ」
「事故の被害は甚大だ。このままでは日本国は滅亡だ。撤退などあり得ない!命がけでやれ」
「撤退したら、東電は100%つぶれる。逃げてみたって逃げきれないぞ!
「なんでこんなに大勢いるんだ!大事なことは五、六人で決めるものだ。ふざけるんじゃない!小部屋を用意しろっ」
まあ当時の官邸も大混乱している状況ではあったと思うのですが、日本の総理としての発言としてはいかがなものかと・・・。
ちなみに菅首相が福島第一原発に到着したのが3月12日の早朝ですが、この時点でかなり機嫌が悪かったみたいですね。
現地に着いてとにかくベントを早くやれと何回も発言しているシーンが本に描かれています。
おそらく菅首相の頭の中では、現場がうろたえていてベントするのを躊躇しているように思えたのでしょうね。
そこで自分自身が行って、数回喝でも入れたらなんとかなると考えたのでしょう。
(ある程度)原発に詳しい東工大出身の菅首相ですから、自分が行かねば誰が行くみたいな使命感みたいなものもあったかもしれませんね。
そして現場で吉田所長と対面します。
吉田「発電所の所長の吉田でございます」
菅「どういうことになってるんだ」
吉田「全電源が喪失した状態で、ベントの方をいろいろやってますけども、なかなか現場は思うようにいかない状況です」
吉田所長はあくまでも冷静に状況を説明していきます。
菅「ベントはどうなってるんだ」
吉田「ずっとチャレンジをしております。しかし、電源がないため電動弁があかないもんですから、大変難しい状況がつづいております。バルブを手であけるべく、現場ではいま作業をおこなっております」
菅「とにかく早くベントをしてくれ」
吉田「もちろん、努力をしております。決死隊をつくってやっておりますので」
この時に菅首相がやっと少し落ち着いたようだと、本に描かれています。
吉田所長をはじめとする現場の多くの人たちが「決死の覚悟」でベントにチャレンジしているのが、ようやく菅首相にも理解できたのでしょう。
ただその事だけを確認する為に震災が起きた翌朝に福島第一原発に乗り込んだとしたら、ただ現場を混乱させて貴重な時間をロスさせてしまった菅首相の責任は重いですよ!
映画では菅首相を佐野史郎さんが演じるみたいですから、みなさん注目しましょう。

水を入れ続けたおかげで「チェルノブイリ×10」という最悪の事態を避けられた

除染作業員

事故直後から全電源喪失注水不能放射線量増加、そして水素爆発と、私はニュースを見ながらこれは現実に起きている事なのか?と疑ってしまうほど事態は悪くなる一方でした。

吉田所長は2012年7月に脳内出血で倒れる10日前に、インタビューに答えています。

その時に語っていた事は、万が一格納容器が爆発すると放射能が飛散し、放射線レベルが近づけないモノになってしまう事から、他の原子炉の冷却も出来なくなる。

福島第二原発にも近づけなくなりますから、合計10基の原子炉がやられてしまう・・・

チェルノブイリ×10!

そんな事態を避けようと、最後まで部下たちが突入を繰り返してくれたことや、命を顧みずに駆けつけてくれた自衛隊をはじめ、沢山の人たちの勇気を称えたいと話しています。

入れつづけた水が、さいごのさいごで原子炉の暴走を止めた・・・確かに福島県とその周辺の人々に多大な影響と被害はもたらしてしまいましたが、最悪の事態にはならなかったその背景には、この本に描かれている多くの人の「決死の覚悟」があったからこそだと思います。

映画『Fukushima 50』、ぜひ楽しみにしています!

 

死の淵を見た男
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