小中学校の給食費が値上りし続けています。
このグラフは文部科学省が調査している、公立の小中学校の給食費(月額)のグラフです。
この15年ほどで約400円程値上りしています。
消費税が上がったり食材費が高騰したりと給食費が高くなるのはやむを得ない事情もありますが、学校給食に関しては今でもさまざまな問題が指摘されています。
今回は学校給食の実情と問題点を取り上げたいと思います。
ポイントは2つです。
①学校給食費未納率は約1%未満で思ったほど高くはない。それよりも量と質を確保した学校給食を完全無料化すべきである
②学校給食の内容は地域によってかなり差がある。少子化や不登校が問題になる中、学校教育の基本である「食育」をもっと重視すべきである
エビフライを給食で出せるか出せないか、これは大きな違いなのだ!(名古屋市教育委員会)
学校給食費徴収率をこれ以上増やすのは困難、それよりも完全無料化すべきである
最近は報道されなくなりましたが、以前学校給食費の未納が問題になっていました。
給食費を払うのは親ですが、その親が携帯料金や服などにはお金をかけているのに給食費は払っていない!という風な感じで報道されていたと思います。
実際問題親が給食費を払っていなくても、その子供にだけ給食を与えないようにする事はほぼ不可能であるのがこの問題のやっかいな所なのですが。
ではこの給食費を払っていない割合というのは全国でどれくらいなのか、文部科学省の調査結果があります。
平成28年度の「学校給食費の徴収状況に関する調査の結果」によると、全児童生徒数に対して未納だった割合は0.8%でした。
全国の小中学校の給食費総額に対しての割合だと、もっと低くなって0.4%でした。
全国の小中学校28000校のうち572校だけを抽出していますので、全国換算ですと約11億円ぐらいの給食費が徴収されていない事になります。
未納金額だけ見ると「11億円もあるのか!」となりますが、未納率だと0.4%ですからね。
現実として、これ以上未納率を下げるのは容易ではないでしょう。
ではどうするか。
私はこの未納率を下げる事にお金をかけるぐらいなら、いち早く全国一律で学校給食を完全無料化すべきだと思いますよ。
現在全国の市町村のうち、46市町村では小中学校の給食費を無償化しています。
給食費に対して何らかの補助を実施している市町村もありますが、無償化の自治体を合わせても全体の約30%にとどまっています。
今後も学校給食費は値上りし続ける事が予想されますので、自治体の補助が今よりも拡充するのかは微妙ですよね。
ちなみに名古屋市教育委員会で、2020年4月から給食費を月額で600円値上げする方針を示しました。
この値上げによる効果として、18年度に一度も登場しなかったエビフライを20年度以降は6回以上、41回だったデザートを83回以上に増やせると見込んでいるそうです。
給食の時間を楽しみにしている児童生徒も多いでしょうから、給食の質向上はどんどん進めてもらいたいですよね。
将来を担う子供の教育を重視するのなら、ぜひ学校給食の完全無料化をぜひ実行してもらいたいです。
学校給食の質が全国でかなりの差がある、そもそも学校給食が無い自治体も
2017年9月にニュースで大々的に報道された、神奈川県大磯町における「学校給食問題」。
外部業者にデリバリー形式の給食を委託していましたが、開始当初から食べ残しが多かったり異物混入が相次ぐなど問題だらけでした。
その結果、その業者からの給食提供を一時停止したというものです。
そもそも神奈川県では、小学校の給食普及率は99%以上ですが、中学校になると現在でも29%にとどまっています。
思春期で食べ盛りである中学生にはぜひ栄養バランスが良い給食が大切だと思うのですが・・・。
この事例のように、給食の質どころか給食自体が実施されていない市町村がまだまだあるのです。
ちなみに学校給食には大きく3つのパターンがあります。
給食方式 | 長所 | 短所 |
単独調理方式(自校方式) 学校に給食室を設置して校内で給食を調理する | ・自校で調理するので配送コストがかからない ・学校内で調理過程の学習を行う事ができる ・温かい内に給食を提供できるので美味しい! | ・設備投資で多大な費用がかかる ・人件費や維持費などの費用もかかる |
共同調理場方式(給食センター方式) 複数の学校の給食を1つの調理場で調理して、専用の配送車で各学校へ配食する | ・施設・設備・人件費や給食事務の合理化により経費を削減できる | ・施設を建設する時の費用がかかる ・各校までの配送費用がかかる ・給食を作ってから食べるまでに時間がある為、温度管理が難しく、風味を損なう可能性もある ・食中毒や異物混入が発生した場合、リスクが広範囲になる |
外部委託方式(デリバリー方式) ・外部の給食業者に委託して給食業務を分散して行う | ・民間企業の施設を利用するので、設備投資費用や人件費を抑える事ができる | ・施設を建設する時の費用がかかる ・弁当方式の場合、衛生管理上一旦冷却する必要があり、風味を損なう可能性がある |
神奈川県の大磯町で問題になった学校給食は外部委託方式ですが、短所にある通り風味を大きく損なってしまったのが問題になりました。
弁当方式の場合、雑菌の増殖を抑える為一旦冷却する必要があるので、冷えたお弁当が美味しくない!となってしまいました。
一番美味しく給食が食べられるのが自校方式ですが、学校内に調理場を設けられるスペースが必要であり、初期投資や維持費用もかかります。
結局はお金の問題なのです。
現在日本の義務教育である小中学校では、不登校の児童生徒が増加中です。
これには様々な要因が関係していますが、私は不登校対策の一つとして学校給食の充実を挙げたいと思います。
なぜならお昼ご飯を楽しみに学校に行っている子供も多いからです。
学校は嫌だけど給食で美味しいものが食べられるなら行ってもいいかな・・・という具合です。
もちろんこれだけで不登校問題が解決できるとは思っていませんが、中一になると同時に不登校生徒数は急激に増えます(いわゆる中一ギャップ)。
食べ盛りの子供にはせめて給食ぐらい美味しいものを沢山たべさせてあげたいと思うのは、私だけではないはず。
それを実施するには自治体の予算では到底無理な話であり、国レベルで給食の無償化を推進していくしかないと思います。
まとめ
2019年10月からはじまった幼児教育無償化に続き、2020年には私立高校の無償化と大学等への高等教育の無償化がはじまります。
教育方面に国がお金をかけることには大賛成ですが、給食の実態についてはあまり世間に知られていないように感じます。
給食一つとっても子供にとっては大変楽しみにしているので、それが美味しくないと学校に行く気が無くなるのも仕方ないかなと大人である私でも思います。
ぜひ全国の子供が満足して美味しく食べられる給食が広がる事を期待します。