先日、離婚後の養育費に関するニュースがありました。
それによると、1月23日に森法相は養育費不払い問題に関して、国が立て替える制度を創設するため、有識者による勉強会を27日に設置する方針を固めたのことです。
シングルマザーの貧困に関しては社会問題になっており、その原因の一つが離婚後に相手から養育費を受け取れないケースが多いことがあります。
今回はその養育費の問題と、共同親権を日本で取り入れる動きと合わせて、離婚後に今までとどう変わるのか分かりやすくご紹介したいと思います。
ポイントは3つです。
①シングルマザーの平均年収は200万円、これに対してシングルファーザーでは398万円。母子世帯の貧困は社会問題である
②離婚後に養育費の取り決めをしている母子世帯は約43%と半数も居ない。
更に離婚した父親から現在も養育費をもらえている割合は約25%と4人に1人しか居ない。
③子供の権利を守る為にも、共同親権の導入と養育費を国が立て替える制度は必要不可欠である!
離婚後の法律が大きく変わる?共同親権と養育費の問題を考える
シングルマザーの平均年収はシングルファーザーの約半分!
このグラフは、シングルマザーとシングルファーザーの平均年収の比較グラフです(出典は平成28年度全国ひとり親世帯調査)。
これによると、シングルマザーの平均年収はシングルファーザーの約半分となっています。
これにプラスして養育費や子供手当などが収入としてあるのですが、養育費に関しては父親から当初からもらっていないか、もらっていても途中で相手から払われなくなるケースが実に多いのです。
それについては次の項目でご説明しますね。
ではなぜシングルマザーの年収が少ないのでしょうか?
それは日本の夫婦における社会での働き方が、依然として父親が外で働き母親が家事育児をするという流れになっているからです。
最近は専業主婦世帯より共働き世帯の方が多くなってきましたが、それでも母親が派遣やパートなど時間を制限して働く事が多いのが現状です。
学校行事やPTA、地域の活動など主に母親が主体の活動はまだまだ多くて、仕事だけに専念できないのが母親なのです。
そういう社会背景があるので、離婚後にお金の事で苦労するシングルマザーが多いというのがお分かりいただけると思います。
養育費を払わない父親が多い現実、そもそも養育費の取り決めをしている夫婦は半数以下!
現在離婚して親権をもつのは約8割が母親であり、養育費を払うのは大半が父親であるという前提で話をしますね。
そもそも離婚する時に夫婦で養育費の取り決めをしている割合は43%と、半数も居ないのです。
これに関しては、離婚時のドタバタで取り決める時間がなかったとかお互い冷静に話し合いができなかったなどいろいろあると思うのですが、離婚時の条件として養育費を取り決める必要が現行制度で無いのも一因でしょう。
ちなみに離婚時に養育費を取り決めていなかった場合でも、離婚後父親に請求する事は可能だそうですよ。
離婚すると法的な夫婦の関係は解消されますが、親子の関係は永遠に続きますからね。
あと、例え養育費を取り決めていた場合でも、その後父親から養育費が支払われなくなったケースも実に多いのです。
ある調査によると、養育費を取り決めていた場合で、最後まで養育費が支払い続けられたケースは2割ほどしかなかったとか。
これらの現実から考えると、シングルマザーの年収が低い事と、養育費を十分に受け取れていないケースが多い事、その2つの要因で一番被害を受けているのは子供なのです。
国の養育費立て替えと共同親権の導入は、子供の権利を守る為の大きな前進につながる
現在の子育てには多額のお金が必要です。
以前ベネッセが行った調査によると、出産から22年間の養育費は平均総額約1,640万円になるとのこと。
平均とはいえお金をどのように工面するかは、育児をしている人なら誰しも気になるところです。
離婚後の貧困問題(特にシングルマザー)を解決する為に、国も少しずつ動こうとしています。
ます一つ目が、先ほどご紹介した特に父親が養育費を払わないケースが多い問題に関して、一時的に国が養育費を立て替えてくれることです。
この改正案によると、裁判所が自治体や金融機関に養育費を支払わない離婚相手の勤務先や預金口座の情報提供を命じられるようになるため、財産を差し押さえやすくなります。
このための費用は現在1件2000円ですが、強制執行までに一定の時間を要することなどから、今回の国が養育費を立て替える制度の創設という方向性になりました。
制度改正後は行政面からでも、養育費を払わない相手に対して影響力が及ぶ事になり、今まで支払われなかった養育費を受け取れるようになるケースが増えてくるのは間違いないでしょう。
もう一つが共同親権の導入です。
現在の民法では、離婚すると父母のどちらかしか「親権者」になれず「単独親権」に変わります(民法819条1項)。
ただ世界を見てみると、欧米では父親と母親両方が親権をもつ「共同親権」制度を導入済みです。
ここで一つ誤解のないよう、補足させてください。
共同親権制度と聞くと、例えば夫婦どちらかが幼児虐待をしている時に問題になるんじゃないのか?と不安に思う方もいると思います。
共同親権制度を導入済みのアメリカでも、実際すべてのケースにおいて共同親権になる訳ではありません。
アメリカでは離婚時に「訪問権の合理書」というものを交わすことになります。
一緒に暮らさない相手に対して「子どもと会う頻度」「面会時間」「時間の過ごし方」「誕生日や祝日、長期休暇の過ごし方」などの詳細なルールを決める必要あり、それが認められてはじめて離婚することができるのです。
当然そこで問題のある親に対しては訪問権が認められないケースもありますから、欧米といえども単独親権になる場合だって多いのです。
欧米では子供を社会全体で育てていくという考えがあるので、無責任な親から親権をはく奪する事さえ頻繁にあります。
以前私が一時保護所について書いたブログ内でご紹介しましたが、日本で虐待やネグレクトで親権停止した件数は年間100件にも満たないのですが、例えばイギリスでは年間2~5万件親権はく奪が行われています。
児童相談所における一時保護所の現状と問題点とは
一般の方にとって児童相談所の存在自体は知っていても、併設されている事が多い 一時保護所の実態 はほとんど知られていないのではないでしょうか。 この一時保護所は、 虐待や非行・親の死亡 などで児童相談所が保護した子供を一時的に保護し子供の処遇を決めるまでの生活の場となる施設です。 国のルールでは、一時保護所の入所期間は2か月を超えないようにとされています。 …
日本では「親」の権利が強すぎて、「子供」の権利が疎かになっているケースが相当数あると思います。
離婚する時も親の意向は重視されますが、では子供の権利はどうでしょうか?
ほとんど注目されていないのが現状なのです。
そういう子供の権利を社会全体で守る為にも、日本における共同親権制度の導入は大きな前進でしょう。
そして離婚する時に父親母親どちらかに明らかな問題行為(虐待やDV等)があった場合、裁判所が単独親権を判断すれば良いだけの話なのです。
共同親権にはメリットもあればデメリットもありますが、今までは選択する事さえ不可能だったのですから、離婚に際して親権を巡って血みどろの議論になってしまう事を避ける為にも、十分意味がある制度だと思いますよ。
繰り返しになりますが、全ては子供の権利を守ろうという趣旨から生まれた制度なのです。
2018年7月15日に報じられたニュースでは、法務省が離婚後の共同親権を認める方向で、民法改正案を法制審議会に諮問する予定があると報じられました。
共同親権制度と養育費を国が一時的に立て替える制度、この2つの制度は離婚後の夫婦や子供の人生が変わるぐらいの影響があるでしょう。
今後の国の動きに注目していきたいと思います。