今年の1月に行われた箱根駅伝。
青山学院大学が2年ぶりに総合優勝しましたが、そこで異様な注目を浴びたのが「厚底シューズ」です。
私も箱根駅伝をリアルタイムで見たのですが、ピンク色の底が厚い靴を履いている選手がやたら多いなと感じていたのですが、この靴が今問題視されているのです。
東京オリンピックを半年後に控えて、この「厚底シューズ」がなぜ問題視されているのか、ご紹介します。
ポイントは3つです。
②過去にも同様に問題視された「高速水着問題」。当時の記録は今でも破られていない事が多い
③厚底シューズの使用が今後公式大会で規制されるのかどうかは、まだ決まっていない!
ナイキの「厚底シューズ」を巡る問題とは?
新記録が続出しているナイキの「ヴェイパーフライ」の使用率は8割!
ナイキの「厚底シューズ」は正式には「ヴェイパーフライ」シリーズと言って、2017年に出されたものです。
ナイキの靴といえば、バスケットボール用の「エア・ジョーダン」や、ランニングスシューズの「エアマックス」など、有名な靴が数多くありますが、最近になってこの「ヴェイパーフライ」が大注目されてきたのです。
厚い底に炭素繊維のプレートを挟み込んでクッション性・反発力を高めており、価格は約3万円です。
少しググってみた所、アマゾンや楽天などでも数多くの「ヴェイパーフライ」が揃っていて、一般の方が使用しても効果が十分あった!と感じている人も多いようですね。
靴自体の反発力で早く走る事が出来るだけでなく、足の疲れを軽減させる効果もあるようです。
その効果は多くの指導者や選手が認めていて、東京五輪女子マラソン代表の鈴木亜由子さんが所属している日本郵政グループは、約2年半をかけて他の製品とデータを比べ、全員が着用しているそうです。
2020年の箱根駅伝では使用率が8割を超えていて、10区中7区で区間新記録が生まれました。
今月19日の全国都道府県対抗男子駅伝でも多くの選手がこの靴で走っています。
米ニューヨーク・タイムズ紙は昨年12月、一般ランナーを含めた詳細なデータを基に、平均的な靴に比べて4~5%速くなると報じています。
今回の「厚底シューズ問題」は、以前の高速水着騒動と同じ
以前競泳において、2008年に英スピード社の水着「レーザー・レーサー(LR)」で驚異的な記録が次々と生まれた事がありました。
体を締め付けて断面積を抑え、水の抵抗を減らす画期的な技術の効果は絶大で、同五輪で男子平泳ぎの2大会連続2冠を果たした北島康介選手ら多くの選手が最終的に使用しました。
2009年世界選手権を含めて同様の水着で選手が世界新記録を連発した結果、「高速水着」は2010年から禁じられました。
男子は東京五輪で実施される個人14種目の半分で、この時期の記録が今でも破られていません。
スピードスケートでは、刃が靴のかかとから離れて力を氷に伝えやすい構造の「スラップスケート」が1998年長野冬季五輪前に急速に普及しました。
本番ではその対応度で明暗が分かれた結果となりました。
ちなみに現在ショートトラック競技では使用が禁止されているみたいです。
日本のプロ野球でも、いわゆる「飛ぶボール」「ラビットボール」が問題になる事があります。
シーズン毎にホームランが出やすかったり出にくかったり・・・。
今年は飛ぶボールだな!と観客の方が冷静に見ているだけならいいのですが、成績に直結する選手はたまったものじゃありませんよね。
スポーツ界において、道具の進化とそれを規制する流れは昔からあるという事がお分かり頂けると思います。
東京オリンピックでは「厚底シューズ」は使えるの?
そんな物議を巻き起こしている「厚底シューズ」ですが、今年の東京五輪で使用できるのか禁止されるのかはまだ決まっていません。
陸上の競技規則では、「不公平な助力や利益を与えるような」靴は禁止されていますが、跳躍種目以外は靴の底の厚さに制限はありません。
英国のテレグラフ紙は新規則で禁じられると報じていますが、同じ英国のガーディアン紙は普及しているモデルの全面禁止はないとしています。
現在厚底シューズでトレーニングしている選手にとっては、仮に禁止になって別の靴で練習するとなると慣れるのに時間がかかってしまいます。
かと言って厚底シューズを最初から使わずにどこまで記録を伸ばす事ができるのか・・・悩ましい判断ですね。
どちらにしても、アスリートファーストの精神で少しでも早く使用可否を決めてほしいと思います。