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茶葉生産量1位の県がついに陥落?静岡茶が大ピンチなその理由とは?【鹿児島の猛追!】

お茶生産量ランキング

ここで皆さんにクイズです。お茶の生産量第1位の都道府県はどこでしょうか?

ファイナルアンサー!「静岡県」ですよね

ペットボトル飲料「お~いお茶」や高級茶の産地としても圧倒的地位だったのですが、実はその静岡茶が大ピンチなのです。

これは速報値ですが、2019年の静岡県内の茶生産量がなんと!1951年以来の30,000トン割れになりそうなのです(2019年12月3日静岡新聞より)。

前年比12.8%減という大幅減少で、天候不順や消費低迷などが響いたようです。

その王者である静岡を猛追しているのが鹿児島県で、2018年の生産量は28,000トンです。

仮に鹿児島で5%ぐらい前年比で増加していれば、お茶の生産量ではじめて鹿児島県が1位になる可能性が出てきたのです

静岡と鹿児島における茶葉生産の実情はどうなっているのか、ご紹介します。

これを見ているお父さんやお母さんへ、子供から「お茶の生産1位はどこなの?」と質問された時に、昔の常識では間違ってしまうかもしれませんよ。

今回参考にした資料は、週刊東洋経済(2019年10月12日号)です。

ポイントは5つです。

①静岡での茶生産量はピーク時より半減!逆に鹿児島では順調に生産量が伸びている
②小規模農家が多い静岡、平坦地を生かして集約化が進む鹿児島
③原発事故が静岡茶に大ダメージとなった
④急斜面で中山間地が多い静岡では、放棄茶園が増加中
⑤緑茶の輸出は絶好調、今後の鍵を握る

生産量を増やせない静岡、順調に伸ばしている鹿児島、その理由とは?

2019年、いよいよ首位が入れ替わる?

日本茶生産量推移

このグラフは「平成30年度茶業振興対策資料」から、日本茶生産量の静岡と鹿児島のグラフです。

2019年静岡の茶生産量は推定値ですが、このグラフを見ると静岡では約10年前と比較して生産量が全く増えていませんが、逆に鹿児島では一時期落ち込んだものの近年では毎年順調に生産量が増えています

現在静岡における茶生産は大変厳しくて、専門家からは「静岡の商店街にある茶専門店は、10年後にはほぼ全滅するのでないか」との声があがっているぐらいです。

実際静岡茶の生産量のピーク時である1975年には60,000トンと超えていましたが、今では30,000トンを割るぐらい・・・半減しているというありさまなのです。

逆に鹿児島茶は1975年には10,000トンにも届いていませんでしたが、現在では28,000トンまで伸びています。

この両者の差は何が原因なのでしょうか


小規模農家が多い静岡、大規模化で効率化が進む鹿児島

静岡の茶畑というと、山あいの傾斜地を切り開いて寒暖の差の大きな気候を味方につけて、全国でも屈指の高級茶を栽培してきました。

静岡での茶畑

しかし、その高級茶の代表である「リーフ茶」が壊滅状態なのです。

リーフ茶とは、いわゆる急須に入れて飲むお茶の事です

かつて日本の食卓では急須でお茶(一番茶)を飲む事が当たり前でしたが、今ではペットボトルのお茶が消費の主流になっています。

ペットボトルのお茶は「二番茶」や「秋冬番茶」など安い茶葉を使いますが、この茶葉生産に対応しきれていないが静岡の現状なのです

逆に鹿児島では、平坦で大区画な茶園が多いことから機械化が早くから進んでいて、更に多様な品種を栽培することにより一・二番茶だけでなく三・四番茶、秋冬番茶まで幅広い品種を生産しています

鹿児島の茶畑

高級茶が主流だった静岡と、幅広く生産し続けた鹿児島、それが実情のようです。


原発事故で顧客離れ

原発事故

更に静岡茶にとって痛手だったのは、東日本大震災による福島第一原発事故です

事故発生から2ヶ月後の2011年5月に、遠く離れた静岡で栽培された一番茶から当時の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出されました。

同時にフランスに輸出された静岡茶からも、同国の基準値を超えるセシウムが検出され、輸出が完全にストップしました。

ある静岡県内の老舗製茶問屋業者の方は、以前は日本茶の売り上げが3000万円近くあったそうですが、原発事故以降激減してしまい、2016年度には600万円まで落ち込んでしまったそうです

それから数年経過して放射性セシウムは静岡茶からは検出されなくなりましたが、一度離れた顧客は戻らず現在も風評被害が続いているそうです。

東電による賠償も数年で打ち切られており、その製茶問屋では以前フランスへ輸出の商談が決まりかけていましたが、この原発事故で白紙になってしまいました。

原発事故による影響は、静岡で今でも続いているのです。


急斜面を利用した中山間地が多い静岡では、高齢化による放棄茶園が増加中

耕作放棄地

今日本の農業は高齢化が深刻な状況で、後継者がいない中で耕作放棄地がどんどん増えています。

この静岡も例外ではなく高齢化や収益低下、機械化による大規模経営にも移行できずに「放棄茶園」と呼ばれる荒れ放題の茶畑が増えているそうです。

一度荒れてしまった茶畑は元に戻すのは簡単ではなく、野生動物が山から下りてきて更に茶畑を荒らすようになります。

急傾斜地では電気柵の設置も難しく、ますます放棄茶園が増えてしまいます。

 

鹿児島県では平坦地での茶生産という特色を生かして機械化を進めていて、更に産地表示を含む適正な表示、生産加工の履歴の記録と開示、かごしま茶基礎GAPの策定やK-GAP など第三者認証の取得推進などを進めているようです。

実はこの第三者機関の認証というのは輸出の時に必要不可欠なのです。

現在日本におけるお茶の消費はどんどん減っていますが、海外に目を向けると健康ブームという事もあり、お茶の消費は拡大しているのです

実際のデータでも緑茶の輸出数量・輸出額共右肩上がりで伸びており、2017年実績では2007年と比較して数量は4642トンと約2.9倍・輸出額は144億円と4.5倍に伸びています。

今後も伸び続ける事が予想されますので、日本茶の活性化の鍵の一つが海外への輸出だということは間違いないようです。


まとめ

みかん

昔の話ですが、みかんの生産量で長らくトップだった愛媛を和歌山が抜いたと話題になりました

その後愛媛県は、みかん単独では抜かれたけどかんきつ類(温州みかん+中晩柑類)では依然としてトップだと苦しい表明をしていました。

たださすがに危機感を覚えた愛媛県では、今までにないかんきつの開発を進めて、ゼリーのような食感で贈答用で人気の新品種「紅まどんな」を出荷するなど、さまざまな取り組みをしています。

愛媛県のみかん栽培も、静岡県の茶畑同様急斜面を利用した農地が多く、大規模化や機械化を進める事は難しい現状です。

そのような状況でも、何かできる事はあるはずなのです。

日本茶の絶対王者「静岡」が反撃に出るのか?

それとも地の利を生かして着々と歩みつづけた「鹿児島」がいよいよトップになるのか?

今後の日本茶業界の一層の拡大の為にも、この2者が共に競い合って市場が活性化する事を期待したいと思います。

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